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覇王の庭・5

2005–08–04 (Thu) 22:05


 翌朝、シキが目覚めた時には、彼の隣にはもうアキラの姿はなかった。
 ゆうべはバスルームでの情事の後、場所を寝室へと移動させてからも二度ほどアキラを甘く啼かせてしまい、仕舞いにはアキラの声が枯れてしまったほどだ。久しぶりだから仕方ないとも思えるが、それにしても激しいシキの熱情を受けとめたというのに、どうやら危惧の必要はなかったらしい。厳つい軍服に包まれた体は一見華奢に見えるが、シキの側近を勤めるからにはアキラもまたそれなりに鍛え上げているのだろう。
 腕にはまだ、アキラを抱きながら眠った感触が残っている。肩と二の腕に残ったアキラの残り香を楽しむように、シキは大きく息をついた。いつ頃からだろうか、こうしてアキラの隣で寝入ってしまうようになったのは。以前はたとえそれがアキラだろうが誰だろうが、他人のいるところで眠ることなど絶対になかったのだが……。これも変化かと、受け入れてしまっている自分を嗤う。

 入り口近くのクローゼットには、シキの軍服がきちんと整えられて、あとは主が袖を通すばかりに準備されている。
「……ふ、……相変わらず、マメなことだ」
 決して押しつけがましくはないアキラのこういう心配りは、今に始まったことではない。シキが覇王の道を歩み始めた時から、公私に渡っていつも側にあり、その真摯な瞳はただシキだけに向けられていた。
 手負いの獣のように睨み返していた、あの熱い瞳が。
 今は、別種の熱さを湛えて、シキを見る。
 最初からこうなることを望んでいたわけではなかったが、その心地良い視線はもう手放せるものではない。その存在無き世界は、考えるも及ばない。

「いや……」

 ベッドに横たわったまま、静かに眼を伏せ、己の思考に笑みを洩らす。

「本当は望んでいたのかもしれんな」

 こうなることを。最初から。

――― 捕らわれたのは、むしろ、俺の方だったか…

 だが、今ならいっそそれでも良いと思えるのは……覇王の覇王たる、揺らぐこと無き自信ゆえか。
 n(ナノ)の血の運命と狂気と、そしてそれと対為すアキラの血の宿命までをも手にした男の、絶大なる自負がそこにあった。


 用意された軍服を、一分の隙もなく身に着ける。覇者の風格をもともに纏いて。
「アキラ」
 扉越しに声を掛ければ、
「…はい」
 と即座にアキラが扉を開く。まるで、シキの行動を予測していたかのように。
「さて、今日こそは少しは歯応えのあるヤツが現れてくれれば、面白いのだがな…」
「そうですね」
 そう言って微笑む、見る者の雄を勝手に屹立させてしまえるほどの、艶やかな瞳で見上げる軍服の麗人を従えて……。

 邪魔者は排除するのみ。目障りな物は蹴散らせばいい。今この時のために、蓄えた力。組織という基盤を持つ、強大なカリスマ。

「では、行くぞ」

 こんなちっぽけなニホンだけでは物足りない。もっと広く、もっと遠くへ。

「はい」


 そう、この世界の全てを ―――――


「俺の庭とするために」





  <覇王の庭・完>




↓(作者あとがき)↓
追記 – open
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覇王の庭・4

2005–08–02 (Tue) 12:13


 張り詰めていたものを解き放って全身の力が抜けたアキラは、そのままバスタブの中へと崩れ落ちた。ほぼ満杯近くなっていた湯が、派手に水飛沫をあげながら、ザアッと盛大に溢れた。湯栓はいつのまにか止められていた。アキラは止めた覚えがないから、シキがやったのだろう。そんなことにさえ気づかなかったとは……。
 アキラは自己嫌悪で、湯の中に頭まで潜り込みそうになっていた。

 ふと、湯気の向こうに何気なく見つけた……白い肌。
「…シ……キ…?」
 驚いて湯の中から勢い良く頭をもたげ、アキラが呆然と呟く。ククっと喉の奥で笑う声が聞えた。
「何を驚いている?」
 楽しげな主の声にも、その声が次第に近づいてきているのにも、アキラはまともに応えることができなかった。
「…、い…え、……」
 アキラが戸惑うのも無理はない。シキは人前ではほとんど服を脱がない。それが例えアキラであっても。彼を抱く時も、そのほとんどが着衣のままだ。軍服の胸に所狭しと飾られた勲章たちを、その感触を、アキラの背中がよく知っている。
 そのシキが、今、アキラの目の前に惜しげもなく肌を晒している…。
 濃く立ちこめる湯気越しにも、シキの抜けるような肌の白さは際立って見えた。けれど、その体には、斜めにはっきりと刻まれた傷痕があった。年月が経ち薄れてはいても、おそらく致命傷に近かったであろうそれは、おそらく……。
 戦場でn(ナノ)と闘った時の……名残り。
 それとも、nがその存在を消滅させるとともにシキに残していった狂気の証なのか。
「そんなに珍しいか?」
 揶揄うようなシキの声が聞えてきて、不躾けなほど見入ってしまっていたことに気づく。そのまま見ているともっと複雑な思いに捕らわれそうな気がして、アキラは思わず目を背けた。
「………フ」
 ほんの少し不穏な響きの笑いを吐いて、シキがアキラの背後に回った。そのまま湯に滑りこんだと思ったら、すぐにアキラの体が抱え上げられた。その勢いで、湯がまた溢れ落ちる。
「あっ……」
浮力に助けられていた湯の中と違い、体の大部分が外に出てバランスを崩しそうになったアキラは、咄嗟にバスタブの両側の淵を掴み支えた。不安定な状態のアキラの腰を、シキが両手で強く掴んで押し広げる。その真ん中に、熱く猛った杭を貫き通さんと。
 己の意思とは裏腹に、体は来るべき瞬間の激痛を避けようと必死でバスタブの淵にしがみつこうとする。けれど、窄まりは既に妖しく収縮を始めていて、早く己の主を受け入れたいと背反している。
 うなじのあたりで低い声がした。
「お前がどう思い、どう感じようが……」
 今一度、湯船から体を大きく外へと出され、次の瞬間、激しく落とされた。
「うっああぁぁっ!」
 己が主が、在るべき場所へと。
「お前の主は、この俺だ」
 鋭い切っ先で、柔らかき肉を切り裂いて。

「それを忘れるな」

 最初の絶叫の後、痛みも痛みと感じとれないほどの衝撃のあまり、アキラは息も継げなかった。硬直した体は、それでもガクガクと小刻みに震えている。これではさすがのシキもそれ以上動けずに、眉を顰めてアキラの体が落ちつくのを待っているようだった。
 そのシキの耳に、苦しげな、息遣いだけのアキラの訴えが届く。
「……ぃ…ぃ……ぇ…」
 ふっと表情の緩んだシキが、片手を移動して、自分の所有の印へと触れる。揺れる湯面すれすれに見え隠れする、銀の光を放つそれを軽く引いてやるだけで、見る見るアキラの全身の強張りが解けていった。
「…っぁ……は…ぁ」
 途端に匂い立つ艶かしさ。シキが動き出すより先に、アキラがシキを求めて自らの体を蠢かす。それに呼応するように、シキも強く突き上げ始める。
「…あっ、…あぁ……、…ん……」
「…………っ」
 荒れ狂う嵐の海のように、波立たされた湯は溢れ、零れ、今や始めの半分の量も残ってはいない。ただそのために湯あたりする心配がなくなったことで、むしろ行為に没頭できるというものだった。

 ひとしきり互いを貪った後、一旦繋がりを解き、シキがアキラの向きを変えさせる。そして、今度はアキラの方から、己が体をシキの上へと落としていった。
「……んっ、……はぁぁ……」
 快楽に溺れながらも、朦朧とする思考を振り払うようにさかんに首を振るアキラ。シキは何も言わなかったが、先ほどのアキラの言葉の続きを待ってくれているのがわかる。だから、熔けてしまいそうな頭で、体で必死で伝えていた。
 これだけは告げたいのだと。
「………最初から」
 途切れ途切れに。
「……………」
 先を促すかのように、シキの動きが和らいだ。ほぅと荒い息をつき、アキラがうっとりと目の前の唯一の人を見つめ直す。
「……俺の、すべてを支配していたのは、……貴方だけ…だ…」
 快楽のために流れた涙に濡れる、艶やかな瞳で。
 飢えて重ねられた、熱い吐息の唇で。

 そして、彼の独裁者が嫣然と微笑み……強く抱きしめられた。

「……極上の答え、だな」

 刹那、アキラはシキとともに、白き夢幻の世界へと解き放たれた。



  <つづく>
追記 – open

覇王の庭・3

2005–07–26 (Tue) 03:16

 しばらくシキの匂いに呆けていたアキラだったが、シキが来る前に汗だけでも流しておかねばと気づいて、急ぎ寝室の奥にあるバスルームへと入る。まず先に湯栓を捻り、バスタブに湯を溜める。すぐに湯気がもうもうとたちこめ始めた。
 このバスルームもそうだが、シキの部屋はどこも決して華美ではない。必要のない装飾は一切排除された、機能重視の、むしろ質素とさえ言えるほどのシンプルさだ。無駄がない。それはシキの生き様にも共通していた。
 本当に力ある者は、誇示する必要などない。力は、それが真に必要な時に示せば良い。無駄なモノは、どんどん切り捨てる。弱い者、不必要なモノは、目にもしたくない。それがシキだったから。

 シャワーを浴び始めて、ふと、最初にシキに抱かれた時のことを思い出す。あの頃は、彼に惹かれ始めてはいても、まだ反抗心ばかりだった。それを力づくで捩じ伏せられて、強引に抱かれた。貫かれた。屈辱にまみれて……。
 けれど、いや、とアキラは首を振る。
 あの時は悔しさから、無理矢理だと一方的だと思いこんでいたが、今思えばそうじゃない。何故なら、アキラは最初からシキに触れられて感じていたのだから。
 そう、この、体の中心に今も光る、シキの所有の証を与えられた時から。
「……ぁ」
 あの甘美で刺激的な瞬間を思い出してしまったせいか、急速に下半身に熱が集まってきていた。視線を下に流すと、否応なく、己が起ち上がっているのが見える。苦笑いが浮かんだ。
 主が来る前からこれだ。まだ、触れられてもいないというのに……。
 自然、強いシャワーの湯を一箇所に集中し、もう片方の手がその場所へと移動していく。
「……っ、…ん」
 己が指が、シキのそれをなぞる。これからの期待も手伝って、ほんの数回擦っただけで一気に欲望が膨らんでいく。
 いきなり、自分の物ではない大きな手に包まれ、先端を指で強く擦りつけられた。
「はぅっ!……っ!」
 痛みと同時に、火傷しそうなほどの熱が荒れ狂う。

「悪い子だ」

 支配者の甘い叱咤が耳元で囁かれた時、白い飛沫が散った。



  <続く>

覇王の庭・2

2005–07–25 (Mon) 09:55

 書斎同様、部屋の主の他はアキラしか入室を許されていない、シキの寝室。
 城の中でも奥まった場所に位置する書斎の、その更に奥に続いている。言わば、城の最深部と言ってもいいだろう。だから、そこで何が行われていても、部屋の中の様子が外に洩れることなど決してない。
 いつも隙なくきっちりと軍服を着用し、張り詰めた糸のような雰囲気を纏うアキラが、その部屋の中だけで見せる顔を持つことも、シキ以外知りようがなかった。

 絶対的な強さと権力を持つ総帥・シキ。
 そのカリスマ的な怜悧な美貌においても、配下の兵士たちは盲目的な尊敬を抱き、無条件に服従を誓う。ただ圧倒され、平伏すしかない唯一無二の存在として。
 そして、アキラも……彼らにとっては憧れの存在だった。
 実力もさることながら、シキから与えられる信頼の度合いにおいて、他の誰にも追従を許さない。しかも、それ以上にアキラの放つ、ストイックとしか言いようのない、隠しようもなく滲み出る色気が、彼らの視線を掴んで離さないのだった。
 まさに、この美貌の二人が並び立つ姿は、圧巻だった。
 力と美、一見して相入れないように思える、もう一つの本能に根ざした部分でも、シキはこの国を支配していたのである。

 久しぶりのシキの寝室。ここしばらくは遠征が続いていたため、この部屋に入るのは、一ヶ月ぶりだろうか。遠征中は、努めて夜を供にしないようにしている。シキは鷹揚にして「気にすることはない」と言ってのけるのだが、アキラがそれを良しとしないのだった。
 ほんの些細なことだとしても、シキの存在に色をつけたくなかった。アキラに惹かれているものたちを、愚行に走らせるキッカケを作るつもりも毛頭なかったから。

 先にシャワーを使っておくように命令され、従順にそれに従う。シキは残った書類を片付けてから行くと言う。本来なら、シキより先に書斎を出るなど考えられないことなのだが、それもシキ本人の命令ならば従うしかない。
 寝室へと続く扉を開け、中に入ると、アキラはまず大きく息を吸った。
 クラリと目眩いが襲う。
 彼の、絶対君主の匂いがする。その香りにしばし酔いしれ、その場に立ち尽くしていた。


  <続く>

覇王の庭・1

2005–07–24 (Sun) 23:41
 夜半過ぎ、無言の書斎に、時折書類が捲られる音とサラサラと軽快にペンを走らせる音だけが聞こえる。この部屋に入ることを許されているのは、主であるシキと、側近且つ秘書でもあるアキラだけである。
 今日はまだいい。在るべき場所に、彼の主がいるのだから。普段はアキラ一人で、これら山積された書類たちと挌闘しているのだから。

 多忙を極める独裁者シキには、やるべきことやらねばならぬことがそれこそ無限にある。だから、こういった些少とも言える書類整備なぞは、極力シキの手を煩わせないように、ほとんどアキラがこなすことに決めてあった。
 少しでもシキの役に立つこと。すべての事柄において、人としての能力を凌駕しているシキには及ぶべくもないが、それでもその負担をほんの少しでも軽くできるのならば、それがアキラの望みでもある。
 そしてシキも、本来ならシキ本人が下さなければならない裁断までも、アキラに一任していた。アキラがその存在のすべてにおいて、常にシキを最優先とし、シキのためにならない判断思考が皆無だということを熟知していたから。
 だが、そうは言っても、やはりシキが決断しなければならないこともある。必要最低限の書類の山は、久しぶりのデスクワークにも関わらず、後数枚を机上に残すのみとなっていた。

 ふっと軽い息遣いを感じた。
 書類に没頭していた顏をあげ、アキラは彼の主に問いかける。
「お疲れですか?」
 今のシキには、疲れなど無縁のものだとアキラもよく知っている。要するに飽きたのだろうが、アキラがそんな不躾な物言いをするはずがない。
 今度こそ、声を露わにしてシキが笑う。
「そう、呆きたのだよ」
 自分だけに向けられる至上の笑みに陶然としながら、アキラも固い表情を崩し微笑んだ。
「では、残りは俺が処理しておきましょう」
 本来はシキの判断を仰がねばならない書類ばかりなのだが、それさえもシキの体調や気分を優先しようとするアキラ。
 くっくっと喉を鳴らし、シキが呆れた顏になる。
「まったく、お前は……」
「シキ様?」
 何を笑われたのかわからず、怪訝そうにアキラが聞き返すと、ほんの少し眉を寄せたシキが。
「二人だけの時は、シキと呼ぶように言っておいたはずだが…?」
「ぁ……」
 途端、あからさまに狼狽し頬を赤らめるアキラ。いつもは真っ直ぐに主の瞳を見つめている視線を、頼りなげにさ迷わせながら。
 シキが言外に匂わせている意味を、それとまごうことなく汲み取っていたから。
「も、申し訳ありません」
 未だに言葉一つで楽しませてくれるアキラの初々しい様を、目でたっぷりと堪能してから、シキが甘い毒を含んだセリフを吐く。
「いや、すぐに終らせる。そうだな、少し疲れたかもしれん」
 顏前で組んだ両手越しに、嫣然とした視線を流しながら。
「……だから、お前が癒してくれるのだろう?」
 アキラの返事は………甘い吐息だった。


  <続く>

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